Interviews
後藤 亜衣子
開発部 材料開発グループ
選りすぐりの材料を- 純度 99.9 % の壁

TADFの周辺材料やホスト材料の新規合成、および外部へ提供するための材料合成を行っています。 有機 EL 材料はフラスコに試薬を入れて反応させ、それをカラムクロマトグラフィーで精製し、取り出した材料を分析機器でチェックし、できた材料を材料評価チームに引き渡すまでが一連の流れです。入社してすぐは、同僚達の材料合成スピードの速さに驚きました。ここでは一人平均2~3種 類の化合物を担当していることが普通ですが、その中で常に純度 99.9 %以上の材料を 用意 すること が 求められます。入社当初はその僅か 0.01 %の不純物を除去しなければなら ない、という有機EL 材料合成では避けて通れない「純度の壁」を克服するのに苦労しました。

求められるのは常に変わらない一定の 「 味 」と品質

材料合成は会社の材料評価スケジュールに沿って進められます。繰り返し精製し純度を99.9% 以上に高めてもその材料がデバイス評価で必ずしもいい結果が出るとは限りません。材料合成の過程ではうまくいかないことも多くありますが、より良い材料を生み出すため分子設計を繰 り返しながら進めていきます。同じ化合物でもスケールアップすれば仕上がりにも微妙な差が生まれるのが難しいところでもあります。分かり易く言えば、いつも作っている一人前の料理を、ある日突然「 今日は 20人前、全く同じ味で仕上げてください」 とオーダーされるようなものです。 そんな中でもくじけず、日々進んで行くのですが、そんな私たちに求められているのは、常に変わることのない安定した「味=品質」と、最高の材料を決められた時間内に仕上げる「スピード」だと思っています。

思いつめた時に気づきを与えてくれる職場

チームでは常に声を掛け合い、励まし合いながら仕事ができています。サンプルとして材料をお客 様に出せるようになるまでには多くの試練が待ち受けており、こんなに頑張って合成したのに、とやるせない気持ちになる事も多々あります。そんな時、仲間たちはいつも絶妙なタイミングで声掛けをしてくれます。忙しい中でもお互いをよく見ているし、気にかけあっています。小さなスタートアップ企業でスピード感を維持したまま最高の材料を作らなければならないのですから、悩んでいる時間が勿体ないじゃん!というのが共通の認識になっているのだと思います。

上下関係も良い意味でフラットです。どんな事でも話せるし、質問もできる。何か聞いたら答えが倍で返ってくるぐらいよく耳を傾けてくれます。それぞれ立場があり、それぞれが抱えるプレッシャーの中で、尚且つ仲間に対しての気遣いができる。ミスをしてもしまっても、そのことを責めるのではなく、必ず一緒に考え、代替案を提案してくれます。ただ材料を作って終わりではなく、仕事の過程を褒められ、励まされることが仕事に対する評価へ、そして会社に貢献していると実感できることが自信にもつながります。また、うまくいかない事があってもチームで支え、励まし合いながら進んで行けるので、結果として私はそれを仕事で返していきたい、というモチベーションに繋がっていくのだと思います。

日本製の材料である自信

やはり目指すのは私達の材料がテレビやスマートフォンの有機 EL 発光材料として市場に出ていく ことです。世界でも多くの企業が有機 EL 材料市場に参入し、日々新技術の 開発 を進めていますが、さすが日本製だね、と言われるような最高の材料を作り出せていけたらいいなと思っています。 仕事で辛いこともありますが、家族の支え、特に子どもたちの成長に支えられています。子ども達が幼いときは日々の仕事や家事の両立にただただ追われる毎日でした。今は子どもたちも大きくなりそれぞれ新たな習い事を始めました。生き生きとしている彼らを見て、私も色々な事に挑戦していこうと刺激をもらっています。