黒瀧 公之
開発部 顧客デバイス開発グループ

人生の転機は必ずしも幸運から始まるわけではない 

苦難=ギフトとし、大切な事に気付き行動を始めた時から

好転への一歩を踏み出している

開発部で顧客向け材料のデバイス評価、事業開発部でFAEを兼務しています 。前職では約10年間、有機 EL 業界でりん光材料のデバイス開発や有機ELパネルの量産、立ち上げを行っていました 。前職を退職後の約7年間は有機EL業界から離れ、異なる分野で自営業を立ち上げ自身のセカンドキャリアを培ってきました。

有機EL業界に再度足を踏み入れる大きな転機となったのは、自身の誕生日に交通事故に遭ったことです。幸いにも命はとりとめたのですが、頸椎・腰椎 を 骨折し苦痛の日々でし た。不運ともいえるかもしれませんが、療養期間中、「もしかすると今回の事故は、これからの人生で自身が世の中にどう貢献していけるか、人生を見つめ直す転機- 神様からのギフト-なのではないか 」と考えるようになりました。そしてこの出来事が今後の自分の人生やこれまで歩んできた日々をじっくり見直すきっかけとなったのです。

そこからは毎日元気でいられること、そして周りの人々に支えられていることに感謝し、自分に出来る事は何か、他に役に立てることはないか 、という事を考え、辿り着いた答えが「もう一度有機ELの世界へ戻る事 」でした。そんな時、偶然私 のメールに1通のスカウトが届きました。それがKyuluxです。当時私は福岡に住んでいなかったので、Kyuluxを再就職先の候補としては考えておりませんでしたが 、リサーチを進めるうちにKyuluxがユニコーン企業の可能性を秘めた最先端技術を駆使した材料系スタートアップであること 、そしてKyulux の技術の生みの親である九州大学の安達教授のインタビューを聞き、そこに大きく感銘を受け、私の中で何かが大きく動き出したのです。そこからの決断に迷いはありませんでした。

人と 、そして社会との関りで得られる価値

有機 EL 業界を離れてから立ち上げた事業は、最初の 3年間は苦労の連続でしたが、4 年目からは それなりにうまくいっていました。個人事業主なので上下関係に悩 まされることも、勤務場所に縛られることも、業務に遅くまで時間をとられ過ぎることもなく、私にとってそれは理想でもあったので 、ある意味夢が叶ったという気持ちでした。

その後もう一度会社員としてKyuluxに入社することになり、とても遣り甲斐のある仕事をいただいていますが、ストレス がないわけではありません 。でも不思議な事に、現在と個人事業主として人間関係のストレスなく過ごしていた日々を比べた時、幸福度 という意味では今の方が少し上だと感じます。 人との関わり、そして社会との関りが私に新たな挑戦や発見、気づきと成長を与えてくれているのだと思います。

すべては繋がっている。人と人、そしてそれを支える最先端技術

Kyuluxには凄い人がたくさんいます 。中でも驚いたのは、一つ一つの緻密なロジックを持った、一言で例えると“ 緻密なロジックで組み上げられた10,000ピースのジグソー パズル”のような人です。そしてその緻密に組まれた絵を、人の頭でも再現できるように伝える事ができるのも驚きでした。実はその方は 、偶然にも僕が過去に参加した学会で受賞した際に声をかけてきてくれた方だったのですが、それから年月が過ぎ、この会社と縁があって面接時に再び対面し、とても驚きました。当時は名前も知らなかったですが顔はしっかり覚えていましたし、その方も私の事やその時の発表内容を詳細に覚えてくれていて感動しました。その後入社してからも教えられることが沢山あり、おかげで上手く考え方の切り替えをしていけるようになりました 。

ただ、この会社に入社して驚いたのはそれだけではありませんでした。実は私には 、学生時代に出会った 忘れられない 一人の少年がいて、当時、彼は鹿児島の高校生で、自身の将来のキャリアを「これからは偏差値で大学を選ぶのではなく、研究内容で大学を選ぶ時代だ!」と 考え、鹿児島から僕が所属していた大学の研究室に見学に 来ていたのです。彼はその後順調に私と同じ大学に進学し 、無事希望していた研究室にも配属、卒業後は偶然にも私と同じ会社に就職し、示し合わせたわけでもない巡り合わせに強い縁を感じていました。私の退職後はお互い全く別々の道を歩んでいたのですが、驚く事に今度は Kyuluxで彼と再会することになったのです。現在は同じ事業開発部に属し、彼と肩を 並べて同じ夢に向かって進んでいる状況に、「 これはもう偶然を通り越して“運命”だな」と感じています。

幸せと成功は似て非なる。今できることを 精一杯

開発を成功させ、Kyuluxの材料・技術を使った次世代スマートフォンを自分の子供たちに見せてやりたいという気持ちが強くあります。同時に「 地方大学から生まれたベンチャー企業の成功事例」を、生き方のロールモデル の一つとして子ども達に残していきたいという思いもあります。十数年前は、北海道出身の私に九州で活躍できる機会が訪れるとは思っていませんでした。素晴らしいメンバーとの出会い、そして地方大学発で 革新的な技術があることに加え、Kyuluxは 有機光エレクトロニクス業界というニッチな場で活用できる MI (Materials Informatics ) 技術の開発も進めています。 私自身も今後のために、スペシャルなスキルを持っておきたいという思いも常にありますので、MI やシミュレーションの技術、プログラミング等についても学習していきたいと思っています。

今を精一杯生き、地位や名声ではなく、更に年齢を重ねても社会に必要とされ続ける力のある社会人としてより成長してゆきたい 、そう強く思っています。